2017年1月30日月曜日

ミシェル・ウェルベック著, 中村佳子訳『ある島の可能性』

クローン技術によって、世代を超えた生命維持が可能になった“ネオ・ヒューマン”。さまざまな欲望から「解脱」して、安全で、しかし他者と接触しない生活を送っている。しかしその永遠の生命が保障された生活から離れ、野蛮な旧人類がまだ潜んでいる世界に出ていく者が少数ながらいる。

世界の果てでも、改良された肉体は生命を喪うことがない。ラストの何もない風景の中、ただ生きているという諦めとともに無感情に漂っている主人公。とても映画的だ。

愛犬が死ぬところは読んでいて切ない。